犯罪心理学的風景

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「犯罪凶悪化論」の根拠−「強盗」について考えてみる
ご無沙汰してしまいましたが、今回は「強盗」について考えてみたいと思います。

近年、犯罪の凶悪化について語られることが多いと思いますが、その論拠の1つとして「強盗の増加」が挙げられています。
実際にグラフを見てみましょう。


(『平成17年版犯罪白書』より作成)

確かに、近年の「強盗」の件数は急増しています。
それに伴って検挙率も急激に下がっています。
だいたい平成9年頃から急増していると見てよいでしょう。

このことを根拠にして、「犯罪の凶悪化」を訴えるマスメディアが見受けられますが、これを鵜呑みにしてしまってよいのでしょうか?

実はこれにはちょっとしたウラがあります。

グラフが急に変化するときには「何か」があると思ったほうがいい、ということは以前にも何回か書いたと思いますが、今回にもそれがあります。
実はこの頃から「強盗」の定義が若干変わったといわれているのです。

「強盗」というと、みなさんは「銀行強盗」のような拳銃やナイフを持って人を傷つけたり殺したりして行われる犯罪を思い浮かべることと思います。
しかし、現状では、「窃盗」、たとえば「ひったくり」などを行った際にうっかり怪我をさせてしまった、つまり「窃盗」+「傷害」も「強盗」として計上されているのです。

そんなバカな、と思うかもしれません。
というわけで、次のグラフを見ていただきましょう。


(『平成17年版犯罪白書』より作成)

このグラフは「強盗」の中の「強盗致死」「強盗致傷」「強盗強姦」の3つについて見たものです。
これを見ると、一般にイメージするような「強盗致死」は近年では減少傾向にあります。
それに対し、「強盗致傷」は「強盗」が増加しだした時期と同じ、平成9年頃から急増しています。
このことは、先程述べた、「窃盗」+「傷害」が「強盗」に、ということを裏付けているといえます。

また、平成16年における強盗の手口別の件数のグラフを見てみましょう。


(『平成16年の犯罪』より作成)

このグラフを見ると、ダントツで「路上強盗」が多いことがわかります。
確かに、俗にいう「オヤジ狩り」も「路上強盗」ではありますが、それだけで37%、実数にして約2700件もあるとは考えられません。
これもまた、「ひったくり」のような路上での「窃盗」の際にうっかり怪我をさせてしまったパターンが多いということを示していると考えられるでしょう。

つまり、「強盗」は件数が増えているように見えるけれど、実は被害は軽めになってきている、ということです。

では、なぜ「窃盗」+「傷害」をわざわざ「強盗」としているのでしょうか。
実は以前は「窃盗」1件、「傷害」1件として計上していたそうです。
しかし、徐々に少年犯罪が注目されるようになって、取締りを強化しよう、という動きが警察内部に現れました。
警察庁が「少年非行総合対策推進要綱」を制定したのも平成9年のことです。

平成9年。
このとき何があったかといえば、かの有名な「酒鬼薔薇聖斗」の殺人事件です。
この事件をきっかけに、少年犯罪に対して注目が集まるようになりました。
その結果、以前ならば「窃盗」と「傷害」とされていたものが「強盗」として計上されるようになったというわけです。

少年犯罪においても、「強盗」の増加はよく取り上げられています。
殺人・強盗の少年検挙人員の推移のグラフ(下図)を見ると、確かに強盗は増加しているように見えます。


(『平成17年版犯罪白書』より)

しかし、現実は、ほとんどが「強盗致傷」であり、実際には「強盗」とは呼べないようなものまでもが含まれてしまっているのです。
つまり、「強盗」が増加しているからといって、一概に犯罪が凶悪化している、といってはいけないということでしょう。
| 犯罪統計 | 18:02 | comments(12) | trackbacks(2) |

質問したいことがあります。

現在、窃盗が増えている傾向がグラフで見受けられます。

警察の認知数も増えています。

増えた内容の多くが窃盗と考えて問題ないでしょうか?
| yume | 2006/02/15 11:32 AM |

>yumeさん
はじめまして。

「窃盗」の認知件数に関しては、ここ数年は実は減少しています。
ただ、『「振り込め詐欺」より「横領」のほうがブレイク中』のエントリ(http://kasabake.jugem.jp/?eid=15)の
一番最初のグラフを見ていただくとわかると思うのですが、
刑法犯全体の動向はほとんど「窃盗」で決まっているところがあります。
「窃盗」だけで現在、年間約200万件もあるのですから、そうならざるを得ないのでしょうが。(苦笑)

というわけで、犯罪全体の増減は「窃盗」が大いに関係している、と考えてよいのではないでしょうか。

また何かわからないことがあればお気軽にどうぞ。
今後ともよろしくお願いします。
| Kasabake | 2006/02/15 9:37 PM |

お久しぶりです☆

ただ単純にデータを見ると誤解してしまうようなことが多くありますね。
窃盗が強盗になってしまっているのには驚きました。
| しろこい | 2006/02/17 4:28 AM |

>しろこいさん
おひさしぶりです。

そうですね。
データを見る際は、そのデータがどのように取られたかにも気を配らないと、
間違った見方をしてしまいかねません。
気をつけたいものです。
| Kasabake | 2006/02/17 9:34 AM |

説明ありがとうございました。

先ほども幼児が殺される事件がありました。

未成年の犯罪だけをピックアップするのは問題ですね。

大人も危険です。

現在、未成年が巻き込まれる犯罪が多いように感じています。

犯罪白書を見てもその統計は載っていなのですが、現在は増加傾向にまりますか?
| | 2006/02/17 1:51 PM |

name入れ忘れていました。

すいません。
| yume | 2006/02/17 1:53 PM |

>yumeさん
結論からいえば、むしろ減少傾向にあるといえます。

「少年犯罪データベース」(http://kangaeru.s59.xrea.com/G-baby.htm)
を見ていただくとわかると思うのですが、
未成年の人口減少を考えてもそれよりは大きな変化で減少しているので、
減少傾向といっていいでしょう。

ただし、平成16年は小学校就学前の被害者数が若干増加していますが、
これで増加に転じたかは今後数年の統計を見てみないとなんともいえません。
ただ、絶対数がかなり減っているのは確かですし、
マスコミが騒ぐほど近年になって増加したというわけではなさそうです。

……結局、マスコミが騒ぎすぎ、で落ち着いてしまうんですかねえ。(苦笑)

ちなみに、被害者に関するデータは警察庁の犯罪統計書(『平成○○年の犯罪』)に出てます。
これはここ数年分であれば警察庁のホームページでタダでダウンロードできるので、
よかったら参考にしてみてください。
| Kasabake | 2006/02/18 12:41 AM |

質問したいのですが、ひったくりを企てたとして、夜間に一人歩いている女性の左肩に手をかけ、その拍子に女性逃げようとして、バッグを落とすとともにくぼみに足をとられて怪我をしてしまった場合、犯人は強盗になるのでしょうか??
| 白ユリ | 2006/03/13 9:33 PM |

>白ユリさん
はじめまして。
そうですね。
温情ある人が対処してくれれば、窃盗一件、過失傷害一件、となるところだと思うんですけど、
最近見られるように厳しめにとってしまうと、
強盗一件となってしまうと思います。

結局、最初に扱った警察官次第なところがありますね。
警察白書段階の統計ですから。

こんな感じでよろしいでしょうか。
また何かありましたら、お気軽にどうぞ。
それでは。
| Kasabake | 2006/03/13 10:04 PM |

たかが引ったくりでケガさせたことが、
強盗になってしまってる…という感じに、
ちょっといやな感じを覚えます。
わたしは引ったくり被害未遂でケガをしたことがあります。
あれは強盗に近いです。強盗といってもいいです。
打ち所が悪ければ、死んでいたかもしれません。
それが、窃盗一件、過失致死一件だったら本当にいやな感じです。
過失致死?殺人です。強盗殺人です。
結局、人は自分や、自分の大切な人が被害に遭わなければ、
多方面に考慮したものの言い方ができないのですね。
| rino | 2006/11/12 11:42 AM |

たかが引ったくりでケガさせたことが、
強盗になってしまってる…という感じに、
ちょっといやな感じを覚えます。
わたしは引ったくり被害未遂でケガをしたことがあります。
あれは強盗に近いです。強盗といってもいいです。
打ち所が悪ければ、死んでいたかもしれません。
それが、窃盗一件、過失致死一件だったら本当にいやな感じです。
過失致死?殺人です。強盗殺人です。
結局、人は自分や、自分の大切な人が被害に遭わなければ、
多方面に考慮したものの言い方ができないのですね。
| りの | 2006/11/12 11:43 AM |

>りのさん

はじめまして。
被害に遭われたそうで。
確かに遭われた方からしたら、そうかもしれません。
ただ。
だからといって、すべてを感情的に分類してしまってもよいのでしょうか?
統計上、「強盗」は「強盗」ですし、「窃盗」は「窃盗」です。
この分類を誤ってしまうと、正しい対策を打てません。
銀行に銃で押し入る事件と、
道端でバックをひったくって怪我をさせる事件を同じに扱ってしまって
果たして効果的な対策が立てられるでしょうか?
わたしは、別にどちらの犯罪が重いとか軽いとか、
そのような話をしているつもりはありません。
どんな犯罪でも、してはいけないものですし、決して許してはいけないものだと思っています。
ですが、感情だけでたとえば厳罰化をして、
それで本当に効果を得られるのでしょうか。
このような議論を冷静にしていく必要があるのではないか、
わたしはそう思って、このブログでこのような意見を述べているわけです。

また何かおっしゃりたいこと等ございましたら、
お気軽にどうぞ。
それでは。
| Kasabake | 2006/11/12 7:21 PM |










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